リアルタイム: キャバ嬢の選択 - スポンサー広告キャバ嬢の選択

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キャバ嬢の選択

沙油とパンケーキ

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静まりかえった車の中は、季菜の感情を、一瞬も安定させることはなかった。
行き先を口にしない新が何処に向かっているのか分からない、けど聞ける様な雰囲気はこの場に流れていない。気持ちをやわらげるように窓の向こうにある景色に目をやる。
少しでも気をゆるめると、感情が零れてしまうのがこわかった。

何がきっかけで、こんな事になってしまったのか?

あの夜、新の腕の中で眠っていた温もりを、一瞬で取り上げられた。
嘘か本当か分からないまま、流れていく現実から少しでも目をそらしながらも手探りで探ったつもりだった。

運命のイタズラかと思うような偶然の中から現れた慶だけど、あの瞬間、確かに自分は救われた気がしたのも事実だった。

何が善で、何が悪か分からない。
勝手にモデルを引き受けてしまったこと? それを新に黙っていた事?
慶に出会ってしまった事? あの週刊誌を見てしまった事?

(一人になりたい……)

窓の景色に目をやる季菜の隣で、新は、車を走らせる。
こんな状態で、何を口にしても無駄な気がした。

季菜の視界の中の景色が止まると、新の車も止まっていた。
目の前には、新のマンションが見えた。

新は、季菜の目の前に、部屋の鍵をぶら下げた。
そこで初めて季菜は、新の目を見た。

「部屋で待ってろ」
新の言葉を聞いた季菜は、少なくともこのまま部屋で二人きりになるんじゃないと分かって安心したように鍵を握り締めた。
「分かった」
今の自分に、同意、意外の返事はないと思った反面、今の自分の気持ちを新は汲んでくれているんじゃないかと思った。

新の車が見えなくなった頃、季菜は、マンションの中へと入っていった。

季菜が入った部屋は、あの時のまま何も変わってなかった。

流されるように、ベットに手をついた、そして誘われるように身を倒した。
ほんの何日か前に、確かにこの場所に居た。
甘い香りに誘われながらも、嬉しくて、低い声に溺れるように、身を任せた。

そっと瞳を閉じると、堪えていた涙が、つうっと、頬に流れた。
ここには、誰も居ない、くしゃりとシーツを掴んだ季菜の手は、小さく震えていた。

陽がくれ、空が暗くなった頃、部屋のドアが開いた音が、静かに部屋の中に響いた。
部屋の中に新が入るけれど、電気はついていない。
手元にあるリモコンで、明かりを照らすと、周りに視線をやった。

すると、あの時のまま、ベットに横たわる季菜の姿を見つけた。

上着を脱ぎ、ネクタイをはずした新は、ゆっくりとベットに腰掛ける。
季菜の意識は、まだ深い眠りの中にあって、起きそうにない。頬にある柔らかい髪に手をやると、涙の痕に触れた。

新は、しばらくその寝顔を見つめたあと、季菜にそっとシーツをかけた。

時間が経過した頃、季菜の瞼はゆっくりと開いた。

部屋は暗いけれど、その向こうに明かりが見える。
耳を凝らすと、シャワーの音が聞こえた。新が帰ってきたんだと思った瞬間、はっきりと意識が覚醒した。思わず起き上がった季菜、かけられたシーツをみて、この場所に新が居たんだと言うことに気づいた。

どの位寝てしまったんだろうか?
思いながら、窓の外を見た。

一人になって、考える時間はあったのに、みすみすそれを逃がしてしまった自分が情けない。
どうしようとかと思っていた季菜の耳に、ガチャリとドアが閉まる音がして、思わず、シーツに身を隠し、瞳をとじた。

すぐそこに新がいる。そして邪魔は誰もいない。
けれど、なかなか季菜は、その場から動くことが出来ない。

(どうしよう……)

「季菜」
明かりのする方から、今確かに新の声が聞こえた。そして確かに名前を呼んだ。
大きく目を見開いた季菜は、ゆっくりとシーツの中から身を起こした。
ゆっくりと髪を整えながら、明かりのする方へと歩く。
「……はい」
それはとても小さな声だった。
けれど、季菜は、新の前に姿を現していた。

「座れよ」
新の言われるがままに、季菜は、ソファへと腰をおろした。
まだ気持ちは落ち着かない、それどころか、今にも脈が振り切れてしまいそうだと思った。
季菜の向かいに腰をおろした新は、袋の中から、テイクアウトされたパンケーキとジュース、それにたっぷりのシロップをテーブルの上に出してきた。
「これ……」
都内ショップにある、季菜のお気にいりのパンケーキ。
(どうして新が……)
こんな他愛もない情報、知るはずなんて……。

「沙油と話したの?」
たかがパンケーキだけれど、沙油しかしらないはず。
何から、何まで話したんだろうと、一瞬不安を過ぎったけれど、新の視線は、目の前のパンケーキを食べろと言っている。
季菜は、フォークとナイフを手にとると、シロップをたっぷりとかけ、一口サイズに切り、口に運んだ。
沙油と二人して、頬を緩ませていたパンケーキは、今、まったく味を感じられないまま、喉の奥に溶けていく。
その様子を、真向かいから新は、じっと見ている。
でもそこにあるのは、あのいつもの憎たらしい視線だった。
「美味いか?」
「……うん」

口を動かしながら、新の方を見てみると、手に取った雑誌を見ていた。
新の気がそれた事に安堵したのも束の間、季菜は、思わずその雑誌を二度見してしまった。
「それっ!」
あの日、莉亜が持っていた週刊誌。
新は、季菜の反応を気にしない様子で、ページを捲っていく。
その動作はなんの変哲もない。ただ、こくこくとページを進めて言っては、今回の根源にと向かって、そして着地した。

「ふーん」
新の視線の下にあるのは、あの場を騒然とさせたあの記事に間違いない。

さっきのパンケーキといい、新の手の中にある雑誌といい、沙油と会ったのはもう確信的だった。
この場で、頭をくしゃくしゃにしてやりたいと思いながら、季菜は、その様子を見ている。
そして、もう何がなにやら困惑してきた季菜の、目の前で新は、パタンと雑誌を閉じた。

「で?」

沙油のおかげで、説明の半分が省略された事を喜ぶべきかどうかは、別として、新の視線は、もう逃がさないと季菜を捕らえていた。


・・・To Be Continued・・・・・
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  •   08, 2016 15:56
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