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キャバ嬢の選択

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素材8
新の反撃
↓↓↓ 沙油と待ち合わせしたのは、新がテイクアウトしたあのパンケーキ屋。

あの夜のパンケーキは、冷めていたし、何よりあの状況じゃ味なんて感じられなかった。
今、口にしているこの味こそだとでも言うかのように季菜は頬を緩める。

「で?」
カフェオレに口をつけた沙油が、確信に迫る。昨日、新に言われた台詞がまたもや、季菜に降りかかる。
けれど昨日のような緊張感はもう季菜の中になかった。

前おきに、心配をかけてしまった事を謝って、季菜は、事の次第を話始めた。
週刊誌から、偶然にも出会ってしまった一人のホストの事、実はカメラマンでもあって、たった一日だけだと頼まれたモデルの事。
その中には、エマへの対抗心が混ざっていたこと。
そして、エマと新が、二人でいた事、そんな時偶然出会った慶の優しさに、思わず触れてしまったこと。
沙油に話せば話すほど、胸の中でほつれていた糸がほどけていくような気がした。

一通り話しを聞いた後、沙油は、口を開いた。
「なるほどね」

自分の知らないところで、早いスピードで流れて行く状況に、やっと追いついたとばかりに沙油はそう言った。

「昨日、新と話したんだよね?」
あの夜、結局新は答えてくれなかったけれど、ほんとは沙油に聞くまでもなかった。
けれど季菜の言葉を、待ってましたとばかりに沙油は口を開いた。
「そう! 来たの! 来たのよ、店に」
おおよそ検討はついていたけれど、やっぱり店に行ったのか。

季菜が、新の寝室で寝ているころ、新は、姫嬢に顔をだしていた。
言うまでもなく、新の登場で一気に辺りは騒然となった。
その場にいたキャストの中を、迷いもなく新は、向かってきたと思ったら、沙油を指名したという。

季菜と慶の間にある事の一抹を聞きにきた新だけれど、沙油は何も知らないも同じだった。
だから、今自分の中にある知っている事だけを新に告げた。

「ごめんね」
いらぬ心配をかけたうえに、手間までかけさせてしまった。
沙油が新に話してくれなければ、きっと仲直りできてなかった。

「悪いと思うなら、ここは、季菜持ちにしてよね」
沙油はそう言うと、メニューの中から品定めをはじめた。

「沙油」
「なによ」
季菜にはまるで興味ないとでもいうように、メニューから目を離さない。
「大好き!」
至近距離で、今にも飛び掛ってきそうな季菜を呆れそうに見る沙油。
「まったく」

「それにしても、問題は新さんじゃなくて、あの娘よね」
フォークの先端を、濃厚なレアチーズケーキに刺すと、口の中にと運ぶ沙油は、窓から見える電光パネルに視線をやった。
本当に何処にでも出てくるのかと思いながら、映しだされるエマを見ながら季菜は相槌を打った。
「私の感じゃ、あのエマって娘、一筋縄では行かないって気がするのよね」
さも未来が読めたような口ぶりに、季菜は、冗談じゃないと言い返す。
「もう、やめてよ、やっと落ち着いたところなのに……」
今朝の電話の事といい、まだ胸の中でモヤモヤは続いている。
「だってさ~」
ただでさえ、こんなにも不安なのに、沙油までそんな事を言い出したら、気持ちの行き場を失ってしまいそうだ。
「何よ、勝てないって言うの?」
季菜の消極ぶりに、沙油は不満だとばかりに、口をひらいた。
「別に……」
沙油にはそう言ったものの、正直、勝てる気がしない。でもそんな事言ったら、沙油の口からなんて言葉が飛び出してくるか。
でも、二人に繋がる色々な物をみてしまうと、どうしても気持ちを拭えない自分がいる。
だから、トラブルのもとになりそうなことにも手を出したし、結果、それで何が変わったかと聞かれると、何も変わってなかった。

甘い甘いパンケーキは、またもや、味がしなくなって気がした。
「ちょっと、そんなに、落ち込まないでよ、ごめんってば」
あからさまに、テンションが低くなる季菜に、言葉をかけるけれど、正直、どうしてそんなに自信をなくすのか、分からない。
新、新と言うけれど、沙油からみたら、ここらへんで季菜と言えば有名だ。
容姿をとったって、性格をとってみたって、エマに劣るところがあるとは思えない。姫嬢の中でキャストにも人気があるのは、季菜の人柄を皆がちゃんと見ているからだ。
それを、本人が自覚していないから、こんなにも悩んでいるんだろうけれど。

今の季菜に気にするなと言ったところで、全く頭に入ってこないだろうし。
だからと言って、もうあんな揉め事は沙油だってたまったもんじゃない。

(どうしたもんかね)
悩んだって解決策が見つかりそうにない。
「とりあえず、せっかく仲直りしたんだから、季菜も悩むことないって」
結局ありきたりな台詞しか出てこなかった沙油の言葉に、季菜は頷くしかなかった。

沙油とわかれた季菜は、新の言われた通り、街中のスタジオに来ていた。
エレベーターを降りて進むと、撮影中のプラフが出されている部屋を見つけた。もう一度メモを確認すると、ゆっくりとドアを開ける。
するとカメラマンらしき人の声がする。
その向こう側を見ると、新がいた。

重なるシャッター音に、角度をかえては、応える新。
つい先日、実際に経験した季菜だったけれど、その差に驚いてしまう。
ただでさえホストとして実力があるのに、経営もして、モデルもこなしてしまう新。

その光景に見入っていると、視界の隅に入った人影に、ふと視線がいってしまった。

(エマ……)

確かにモデルのエマだった。
彼女は、モデルだからこの場所に居ても不思議はないはずなのに、季菜の心はざわついてしまう。

(どうしよう……)
なんとなく、この二人が一緒にいるところを見たくない。
そう思うと、黙ってスタジオから出て行こうとする季菜。するとその背中に新の声が聞こえた。
それは撮影を中断する声。

「季菜」
まさか呼ばれるどころか、気づかないだろうと思ってたところにかけられた声に、季菜は、足を止めた。
近くに寄ってくる新と、いきなり撮影を中断したせいで、集められた視線に、仕方なく振り向くと苦笑いをしながら口を開く。
「さ、撮影なら、言ってくれれば……」
こんな場面に出くわすこともなかったのに……。
その表情をみれば、この場から、逃げたいとしているのは、一目で分かったはずだった。けれど新は、企んでいるような笑みを季菜に向ける。しかもその手は、しっかりとつかまれて離してくれそうもない。

「ちょっ、ちょっと新っ」
スタジオの入り口から、あっと言う間に中央に連れてこられた季菜。

「えっ? ちょっと何……」
新の表情は嫌な予感しかさせない。
新は、季菜に気づかれない様にカメラマンに合図をする。
するとシャッターの音が響いた。
「えっ?! 嘘、新っ」
勝手に引っ張り出して、勝手にフラッシュをたかれて、季菜は、何をするんだと新に抗議を試みる。けれど全くそんな事気にしていない新は、季菜を肩を引き、軽くキスをする。
こんな大勢見ている場所で、何してくれてるんだと季菜の顔は、わなわなと赤くなる。
手をあげ新の胸を叩いてやろうとしたけれど、腕をかんたんに掴まれたと思えば、引き寄せられる。
あっと言う間に新の香水の香りが季菜を包み込んだ。

振りほどこうとするけれど、新は、季菜をぎゅっと抱きしめたまま離れようとはしない。
「ちょっと! 新」
季菜の声は、あくまでひかえめで、新にしか聞こえない。
こんな場所で大げさに騒がしくするのは控えたいけれど、新に何か言ってやらないとと思う心と、間違いなくエマはこれを見てるって事。

すると新は、抱きしめていた体を離すと、再び軽く唇に熱をふれさせた。
恥ずかしがる季菜だけれど、新に触れられて嫌なずもなく、そのジレンマに唇を軽くかんでは新を睨む。
どうしてこんな事するの? 季菜は、抗議の問いを視線で送る。
すると、新は、一言だけ季菜に、つげた。

「勿体ないけれど、これくらいで許してやるよ」
新の言葉は、意味不明。全然全然、意味不明!



けれど、そんな新の言葉の意味は、この一週間後に知ることになる。

「季菜さん!」

テンション高めで出勤するなり、息をきらしながら茜が手に持っているのは、週刊誌ではなく、あの一件で騒がせた【Butterfly】の雑誌。あの時の悲惨な現状がフラッシュバックしそうになり、季菜は、まだ開いてもないのに、もう見たくないと顔をそむける。
けれど茜は、目をキラキラとさせながら、そのページを開いた。
「これっ!」
開いたページを見ようと、側にいた莉亜や、沙油までもが雑誌を覗き込んだ。

あっと、思わず声をあげそうになった季菜。
先週、新の撮影所に行ったとき、勝手に撮られていたあの写真。
それは新の特集ページ。

うまい具合に編集しているけれど、そこには確かに季菜がいた。
あくまでモデルの一人には変わりないけれど、新の眼差しがやわらかかったり、季菜にあの瞬間仕掛けたイタズラな視線。でも目をひいてしまう一枚。それはすべて季菜に向けられるものだというのは、すぐに分かった。

「新さん、ヤバすぎっ」
雑誌の新に落とされてしまったのか、莉亜は、ほうっと頬を赤らめている。

「やられたわね」
知らなかっただろう季菜の反応を見て沙油は言う。
「どういうこと?」
「多分、新さんなりの反撃じゃない?」

まさかと思ったけれど、あながち沙油の言うことも間違ってないかもしれない。
あの時、新の言った言葉は、この事を言っていたのだ。
まだ、半信半疑な季菜だけれど、沙油は確信めいた台詞だった。

噂になっている、エマとの事も、回りくどい様で分かりやすく否定しているのは、新の表情をみれば、分かるひとにはすぐ分かる。
しかも、季菜の表情は見せていないけれど、抱きしめるその視線の向こうに新が誰を見ているかも……。

「参った。さすが新さん」
慶に受けた借りも、しっかりと返しているなんて。

新の事だ。まさかやられっぱなしではいないだろうとは思っていたけれど、何気ない特集ページに、すべて詰め込まれている。そう沙油は感心してしまう。
ただひとつ残念なのは、当の季菜があんまり分かっていない事だけど。

「ほんと、あなたはお馬鹿さんね」

ため息を吐きながら、季菜の髪をくしゃくしゃと遊ばせる沙油だった。


……To Be Continued…



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Published on: Sun,  25 2016 17:00
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