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キャバ嬢の選択

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素材8

操からの相談事
↓↓









その日は一日雨だった。部屋の時計は夕方の5時を指している。にも関わらずまったりとしているのは、今日は店が休みだからだ。この後の予定は特にない。新に連絡してもいいし、たまには一人の時間を持つのもいいかもしれない。そんな事を考えていた季菜の携帯のLINEがなった。
なにげなく見てみると、そこには操の名前が表示されていた。

いつも使っているファミレスに季菜が到着したのは、6時過ぎの事だった。
操は、季菜の顔を確認するなりなぜか安心したような表情をさせ席はここだと言うように軽く手をあげた。
「ごめん、遅くなっちゃったね」
「いえ、私こそ急にごめんなさい」
「それで?どうしたの?」
操が夕方から季菜を呼び出したのは、相談事があったからだった。性格が比較的控えめな操は、はじめ季菜に相談するのを迷っていたのだと前置きをした。けれどやっぱり自分で抱える問題にしては心細く、かといって相談しようにも茜達に相談すれば事が大きくなると思ったと言う。

「最近、あるお客さんに……つけられている気がして、気のせいだったらいいんですけど」
「え、誰?私の知ってる人?」
季菜の言葉に、操は静かに首を振ったあと、言葉をつづけた。
「一か月前くらいから来てくれるようになって、だいたい週に2回くらいのペースで来てくれてて、ありがたいなって思ってたんですけど、帰りとかに視線感じるようになって、他の席についているときも視線を感じる時がしばしばあって……」
初めは気のせいだと思ったと操はつけたした、けれどそれがだんだん目につくようになって、最近では昼間も視線を感じるようになってきて、ついにはマンションの近くでも見かけたと言う。
「そう、それはちょっと怖いわよね」
確かに親しくなったお客に自分の住所を教える事もあるけれど、それは自己責任であり、相手を信用しているからこそ出来る事だ。けれど今回、操はそこまで親しくなっているわけでもなく、ましてや自宅を教えた覚えもない。
基本的にお客の事を大切にしている操にとって、気味が悪いという感情を持つ事に罪悪感があったという。胸の中でそんな事を疑うのは失礼だと思うジレンマに悩まされていた。
そこで操は、一番信頼している季菜に連絡を入れたのだ。
操の性格はよく知っているつもりだ。お客の事を引き出すくらいだ。どんなに悩んでいるのかは言わずとも分かった。
自宅まで知られている操をこのまま家に帰すわけに行かない。店に相談すればなんとかなるだろうけれど操があまり事を大きくされる事を望んでいない、ならば――――。
「分かった、とりあえず家においで、操」
目の前で柔らかく笑う季菜の顔をみると、胸の内が軽くなったのか、操はゆっくりと頷いた。


「操、アイスティーとコーヒーどっちがいい?」
季菜は操を部屋に連れてくると、適当に寛いでと言いながらキッチンに立った。
「えっと、アイスティーでお願いします」
「分かった」

(さて、どうしようかしら)
冷蔵庫からティーポットを取りながら季菜は考える。操を家に連れてきたはいいけれど、解決しなければ話は終わらない。かと言って右から左へと移せるほど簡単な問題ではないことくいらい分かる。けれど自分まで悩んでしまうと、操がもっと悩んでしまうような気がした。
「操、しばらくここに泊まっていいから、とりあえず鍵をかしてくれない?」
操の家は知っているし入った事もある。操の部屋はいつも綺麗に整頓されていて、何がどこにあるのかも、模様替えをしていなければ頭に入っている。
「だ、大丈夫ですか?私も一緒に――」
「だーめ。操はここで待っててよ、そんなに時間もかからないし、私一人歩いていた所で一般人と紛れてなんともないから」
そんな問題ではないと思ったけれど、今は自宅に近づきたくないと思う心が、操を頷かせてしまった。
「ついでに、何か食べるもの買ってくるから、適当に寛いでて。借りてたDVD好きなの見てもいいよ」
「ありがとうございます」
操から鍵を預かった季菜は家から出ると、操の自宅へと向かった。

それからしばらくすると、季菜の部屋のチャイムがなった。
季菜のいいつけ通りに鍵は閉めているし、何か忘れものでもしたのかと思った操は、ゆっくりと立ち上がると、玄関に向かった。
「季菜さん?」
相手が季菜である事を確認する様に操がそう呼ぶと、かえってきた言葉は季菜の声色とは異なるものだった。

空が暗くなったころ、軽い足取りで季菜は操の自宅に向かって歩いていた。夜街を歩くのは職業柄慣れていた季菜にとって、操の自宅まで行く事なんて朝飯前。
操のマンションに着いた季菜は、操から貸してもらった鍵を鍵穴にと差し込んだ。
部屋の電気をつけると、季菜の記憶の中にあった光景がそのままあった。
「えっと、確かここに……あ、あった」
クローゼットの中から操の服を何着か取り出すと、持ってきていた大きめのカバンの中にと入れた。その他にも操の化粧品や歯ブラシなど一通目に着くものはカバンにしまい込んだ。
「よし、これ位でいいかな」
季菜は満足したようにそう言うと、来た時のように部屋を出ると電気を消した。マンションから出ると鍵を閉めた。
そして自宅へと歩いていると、季菜はすぐに視線を感じた。それは操が言っていたあの視線だとすぐに分かった。初めは気のせいかと思っていたけれど、操の自宅を知られていて、そこから出てきた人物であるならこの暗がりのなか操だと勘違いしてもおかしくないと思いなおした。

まだ季菜のなかで何の案もかたまってない。今更になって迂闊だったと思わず息を吸い込んだ。まさかこんな街中で何かをするとは思わないけれど、このまま自宅まで追跡されたら、操の事がバレてしまうのも時間の問題だった。そうすればまた操は行き場所を失ってしまう。それだけは避けたかった。

このまま違う方向へ行けば、少なくとも家を知られる事はない。そう思った季菜の足は自然に自宅から遠ざかっていった。
(とりあえず、まかなきゃ)
操から聞いたのは、男だという事だけ。顔も体格も分からなけりゃ性格も分からない。だから迂闊に近づくことは避けたかった。
そうは思ったけれど、ここら辺は人口密度が少なくて人通りもあまりない。どこに住むかは人の勝手だろうけれどストーカーからしてみれば恰好の場所に違いなかった。
季菜は、速足で歩いた。けれど視線が近づいてくるようで気持ちが悪く、怖くて後ろを振り向けなかった。いつの間にか鼓動がはやくなり背中がヒヤリと冷たくなった。
けれどこのまま自分が逃げていても根本的な解決にはならない。そう思ったら自然と季菜の足の速度が落ちた。そしてとうとう止まってしまうと、意を決したように、くるっと身を返した。
季菜の動きが止まるのと同時、付いてきた影も止まった。薄暗い闇のなか、男の声が季菜に届いた。
「み、操ちゃん」
自分の目の前にいるのが、操だと思い込んでいるその声に、ゆっくりと季菜が言葉を返した。
「悪いけど、操じゃないわ」
季菜の声に、男の影が驚いたように動いた。
「――待って、落ち着いてよ」
焦った様子の男が逆上してはいけないと、季菜は落ち着かせるような声色をさせた。
「私は、操と一緒に働いている季菜って言うの」
有名嬢の名前を聞いた男は、一瞬動きをとめた。
「それでどうしてあんたが……」
「あのね、悪気はないかもしれないけど、操が困ってて……」
「僕は操ちゃんを見守っているだけだ」
「う、うんそれは分かるんだけどさ……」
こういう男には、何を言っても効かないのは季菜にもうすうす感じてきている。だからと言って強く言い放ってみても逆効果なのも分かっている。季菜の中の小さな恐怖がどんどん膨れ上がっていくのが分かる。

季菜の言葉に納得がいかないのか、男は苛立ちを見せるようにジリジリと距離を詰めてきた。思わず季菜が喉を鳴らす。もともと操を付けまわすような男だ。話が通じる相手じゃない。男が距離を詰めるたび、季菜の足も一歩ずつ後退していく、けれどそれも阻むように壁に背をついた。

「あの、落ち着いてください」
もうこれくらいしかかける言葉が思い浮かばないほどに季菜の心臓は早く鼓動をきざんでいた。
「ねえ、操ちゃんは?」
「あの、だから操は――」
――怖い。
季菜の間の前に男が来た瞬間、息をひゅっと飲み込み自身をかばうように手をやった。

けれど、その手は季菜に触れることなく止まっていた。たった今、触れそうだったその手の感触がいつまでも届かない事を不思議に思った季菜が目をあけると、アッと口を開いた。
「あ、新――」
季菜に触れようとしていたその手は、新の手によって捻り挙げられている。
「お、お前はっ――」
痛み顔をゆがませながらも、記憶にない男の力にひれ伏している。
新は、男の影を季菜から遠くに話すとその口を開く。
「誰に断って、そいつに触れようとしてんだ」
思いもしなかった人物に、季菜は頭がついていかない。ついさっきまで恐怖に縮んでいた心臓が別の意味で鼓動を早くする。
「お、俺は操ちゃんを……」
「いいか。自分が可愛いけりゃ二度と操とこの女に近づくな」
ストーカー男は、ごくりと喉を鳴らし新の言葉に何度も首を頷かした。
すると、新はつかんでいた男の手を放し解放させた。男はすぐに季菜の方を見向きもしないまま立ち去っていった。
呆然としている季菜の元に新が近寄ってくる。
「オイ」
新の声は不機嫌さを含んでいる。
「な、なんで此処に……?」
頭の中で何度も考えたけれど、こんな場所に新が来る確率なんて一体どれほどの物なのだろう。
「お前ん家に行った」
「え、私の……」
どうりで――。季菜の中で納得がいったと同時、この状況がまずいという事に気が付いた様だった。
「何で言わねえの?」

新の事を思い浮かべなかったわけじゃなかったけれど、こんな事態に遭遇するとまで予想が出来なかったこと。新に相談したところで答えがでるような気がしなかった事、頭の中ではいろいろと思い浮かべたけれど、どれも新を納得できるような言葉ではないような気がして口にする事が出来なかった。
「ごめん、考えが甘かった」
せめてここまで新の車を出してもらえたら、この状況にはならなかっただろう。そして自分の願いを快く新はかなえてくれたはずだった。季菜が反省しているのが目に見えて分かったのか、新はそれ以上追及する事をあきらめた様に息を吐きだした。
「ほら、行くぞ」
新が、季菜の手を造作もなく握りしめる。
それはさっきと同じ男と言う生き物には違いないのに、驚くほど季菜の心の中を落ち着かせた。

……To Be Continued…

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Published on: Tue,  06 2018 18:31
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